漫画の地球儀

銃 感想・レビュー・評価・あらすじ【中村文則】【小説】

スポンサーリンク

銃 (河出文庫)

雨が降りしきる河原で大学生の西川が出会った動かなくなっていた男、その傍らに落ちていた黒い物体。圧倒的な美しさと存在感を持つ「銃」に魅せられた彼はやがて、「私はいつか拳銃を撃つ」という確信を持つようになるのだが…。(アマゾン引用)

作品紹介


『銃』は昨年『私の消滅』でドゥマゴ文学賞を獲りすっかり世界的にも有名な作家になってしまった、中村文則先生のデビュー作であり初期の代表作です。

ある日、偶然銃を拾った大学生の主人公は少しずつ銃に潜む暴力性と美しさにひかれていきます。

いわゆる、普通の大学生活を送っていた主人公が非日常の象徴のような銃に憑りつかれ次第に狂っていく様が乾いた文章で紡がれていきます。

そして、銃は主人公を引き戻せない世界へと導いていってしまいます。

乾いた文章と異邦人


昨日、私は拳銃を拾った。これ程美しいものを、他に知らない―。

これはこの物語の初めの文章なのですが、この最初の一行で物語に一気に引き込まれてしまいました。

中村さんの文章はどこか乾いたところがあり、とくにこの作品はカミュの『異邦人』を思い出します。

この一行は『異邦人』の最初の文章『今日、ママンが死んだ。本当は昨日かもしれないが分からないー。』に通じるところがあって、初めの一行でこの小説の空気感を作ることに見事に成功していると個人的に思います。

まとめ


この小説は、ごく普通の大学生活を送っていた主人公がある日突然「銃」という非日常と出会ってしまい、以後必然の下に破滅へと突き進んでいく過程を描いています。

彼は、間違いなくごく普通の大学生なのだけど、一方で間違いなく狂気を抱えてもいました。

それは、この小説の冒頭で表現される、銃を「これ程美しいものを、他に知らない。」と感じる感性にあります。

そして、そこに日常に潜む不条理があって、カミュの『異邦人』に通じる。

時代を現代へ、舞台を日本へと移した『異邦人』なのではないかとつくずく感じる。

個人的点数75点


銃 (河出文庫)

銃 (河出文庫)