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ぼくは小説家になった 感想・レビュー・評価・あらすじ【小説】【司悠司】

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ぼくは小説家になった (イースト文庫)

作品紹介

ふとしたことがきっかけで新人賞を受賞するに至った新人作家の実像を描いた長編の「作家小説」です。

会社にも社会にもうっぷんを抱えた主人公が、心の赴くままに書いた小説が審査員に評価されて、見事受賞に至るものの、なかなか仕事には結び付かず、いい作品も書けずに四苦八苦、といった感じの苦悩に満ち溢れています。

協力者はいるものの、しかしそうした人たちの力だけで大きな仕事にまで至るのはなかなか難しいといった現実や、勢いを宿している受賞作を超えるのは大変、といったリアリティが散りばめられています。

思い入れのシーン

社会への不満が結実したような形で賞を取り、華々しく、と一応言える程度の扱いを受けてデビューした柘植 祐一が、受賞後第一作を仕上げられなくて、自分には才能などないのか、などと悶々と葛藤している時に原稿の依頼が来て、喜び勇んで出向くというシーンがあります。

作品の山場ではないけど、あれほど書き手のリアルな感情を示したシーンも珍しいと思う。

書けるはずの文章が書けない、というだけで作家は自信を根本から失ってしまうもので、でもそんな状態でも寄稿の依頼があればすぐに元気になれる、そうした作家の本能的な部分を書いているのは素晴らしいリアリティだと思いました。

まとめ

様々な作家や志望者を題材にした小説があるけど、プロの書き手と対象を限定した場合、多くの人にとって、もっともリアリティを感じるものの一つが本作なのではないかと思います。

新人賞のみの完全な一発屋というのではなくて、かと言ってウチの雑誌でも、いいや我々のところで是非、と引っ張りダコになることもない、ごく一般的な新人として業界に入ったが故の大変さと喜びに満ち溢れています。

雑誌のカラーや編集者によって評価が一変することや、先方に真意を察してもらえずボツになるやり切れなさなど、恐らくプロになったら誰もが経験するだろう様々な出来事が、多少のデフォルメを交えつつも、極めてリアルに書かれています。

いい具合の毒も含まれていて、楽しめる小説です。

おすすめ度B+

ぼくは小説家になった (イースト文庫)

ぼくは小説家になった (イースト文庫)